このシリーズ最高の一本
投稿者:0069 追加日:2020/08/16
いかにも中流家庭の普通のお嬢さんが、中流の若妻さんになったという雰囲気の女優さん。たぶん誰もが、こんな感じの女性は身の周りに普通にいた(いる)よねと思うような方です。なかなか綺麗で、品もよく知的な感じもあります。(確か、作品中で海外留学の経験も語っていたはず)
ですから見始めたときは、とてもAVに出るとは思えない女性という印象を持ちました。
しかし彼女は結婚以来旦那から肉体的に一切かまってもらえないという不幸な環境で、単に肉体的な満たされなさだけでなく、心の寂しさも募らせていったようです。
その寂しさと不満が積もり積もった、深い深い精神の闇の中から、彼女の心の叫びが聞こえるような絡みを見せてくれます。
彼女の眼差しには満たされない不幸への悲鳴が、彼女の体の動きには寂しさに耐えきれないことからくる嗚咽が混じっています。
ですからことが始まる前の彼女の表情には、期待というより渇望とでもいうべき妖麗さに満ち、彼女の絡みはかなり激しくエロティックなものとなりますが、そこに淫靡さよりも人生の重荷からくる悲しさを感じます。他ではなかなか味わえない独特なエロスです。
彼女は監督との情交の中で、初めて救いの光を見たのではないでしょうか。それが最後の別れのシーンの、_烈な切なさにつながります。その切なさは見ているものにまで感染するほどのものです。
ここまで来ると、このビデオは人間と愛欲の問題を扱った一種の芸術と呼べるのではないかとさえ思います。
付け加えると彼女、心と肉体の渇きを満たせる手段を見つけたと考えたのか、AV女優への道に転身します。いくつかの作品で見ることができます。中にはかなり過激、倒錯的なものもあります。しかし評者は間違いなく本作がデビュー作と推測します。彼女の表情、身体の反応どれを見ても、そうだと自信をもって断言できます。
ただ、このビデオに出たことは、彼女にとって一時的な救済になったかもしれないが、本質的な救済にはならなかったのではないかという気がしてなりません。「監督、あんたも罪なことをしたね」、と言ってやりたくなる、やるせないような気持にもなることも付け加えておきます。しかし、解決にならないというのも人生の一つの宿命であり、逆にそれだからこそ、この作品は芸術になっているとも思います。
なお、愚にもつかぬことばかり書きつらねてしまいましたが、エロさも抜群、であることは言うまでもありません。旧作ですが、何回見ても、勿論いま見ても、本当に興奮します。